CSR REPORT 2017
67/69

「わが子の将来に幸あれ」と願う親の多くが、小さい頃から学力をつけるために塾に行かせたり、突出した能力をつけようとスポーツクラブに通わせたりしていますが、人生の「幸い」は平素の今の生活にこそあることを教えるべきです。手のかかる子育て期を「がまんの時代」と考えている親は、つい「はやくはやく」と急き立てます。おしっこを漏らしたり、ジュースをこぼしたりの、未熟であるがために繰り返される失敗は、できればなくしてほしいイライラの原因なのです。でも二足歩行ができるようになるために、首がすわり、寝返りをうち、おすわりができ、ハイハイして、つかまり立ちして、つたえ歩きをすることが必要です。そして走る能力も育ってきます。どの段階も省いたり、順番を入れ替えたりすることはできません。私は全国の学校で講演活動をしています。「家族全員のために自分一人で朝ごはん(ごはんとみそ汁)の準備ができる人」と質問すると、小・中・高いずれも、できると答える子は1%未満です。これは、おかしいのです。人類は進化の過程で、20歳で成人になれるような成長プログラムを獲得しています。母乳を与え、おむつを替えてやり、離乳食を与えながら話しかけてやると「母性本能」が芽生え育つよう、脳にプログラムされているのです。私が小中学校で校長職にあったときに「子どもだけで作る“弁当の日”」をスタートさせたのは、日本国中の子どもたちに、本来辿るべき成長段階を体験させるためでした。問題行動を起こす児童・生徒たちの食生活が崩壊していることは現職中にも、教員だけでなく心理学者や精神科医、歯科医からも指摘されていました。自分の食べるものを自分でつくることができる子どもを育てることは、未来世代の離婚率を下げ、家庭内暴力や児童虐待を減らすことに直結します。それを深く受け止めてくださっているCGCグループの「お料理する人を応援します」という活動は、“弁当の日”の実践校を増やしています。国家の基盤を形成する最大の社会貢献だと思います。地域に密着したスーパーへ家族連れで買い出しに行くという現象が、“弁当の日”で日常化したとき、「今ここにある幸せ」をわが子に与えられるのです。1949年、香川県出身。香川大学教育学部卒業。小学校教員9年、中学校教員10年、教育行政職9年を経て、2000年から綾南町立滝宮小学校、国分寺町立国分寺中学校、綾川町立綾上中学校の校長を歴任後、2010年3月退職。以降フリーで「弁当の日」を全国に広める講演活動を続けている「弁当の日」提唱者 (元香川県小・中学校校長)オフィス弁当の日 代表竹下 和男さん子の自立をうながし、家族の絆を生む“弁当の日”地域のスーパーマーケットは「今ここにある幸せ」を支える第三者からのご意見「協業のこころとちから報告書2017」を読んで64CGC GROUP CSR REPORT 2017

元のページ  ../index.html#67

このブックを見る