CSR&CSV REPORT 2019
53/57

県別『おかずの本』編集者開港舎代表はっとり いっけい服部一景 さん台所は団塊世代の原風景であり、おかずの本の原点でもある。「私たちが最後の教え手、郷土料理が途切れてしまう」と嘆く食改善*のお母さん。同居する母親から料理を教わった団塊世代である。文化の伝承は三世代抜けると途絶えるという。「中国料理の原点は阿媽(あまー・母さん)の料理。家それぞれの味がある」とは横浜中華街発展会の理事長。二百余の料理店が軒を並べても「多様だから競合しないし集まれば力になる」と言う。二人の言葉に後押しされて、おかずの本が始まった。食育基本法ができる前年のことである。「地元の旬の食品や伝統食が身体に良い」という大正時代の食養運動のスローガンが「身土不二」。郷土の食材の作り手を訪ね、台所の主役に普段着のおかずを取材して十県。日本の食の風土の豊かさを実感した。例えば汁物、のっぺ、けんちん、だご・・・と同じ具を煮ても十県十色。地域と季節の旬を味わう日本の食の多様さである。伝統野菜が注目されている。地域の気候・風土・土壌に適応し根付いた地域独特の野菜。愛知では35種、高知では25種が作られている。地産地消のローカルブランドとの出会いは取材の旅の楽しみである。手間暇かかるが有機農業と共に若い農業者に人気がある。地域で生まれ育てられてきたスーパーマーケットは地域の台所。伝統野菜や畑直送の地場野菜が並ぶ、生産者の顔が見える地産地消の場である。地域社会の拠点としてスタートした「ふれ愛ひろば」は台所に隣接する茶の間。家族が寄り合う団欒の場である。食文化の伝承はじめ、生活や祭事・年中行事など地域の文化を継承する拠点として生かされていくことを期待したい。おかずの本との連動も楽しそう。スーパーマーケットには地域の食情報が溢れている。一つ一つに個性があり直接的間接的につながりあうCGCグループはさながら「always地域スーパー多様性」であると思う。1949年、東京都出身。世界文化社で児童書編集の傍ら『国鉄時刻表』に駅ルポを連載。以後、神奈川新聞や雑誌に人物記事や紀行文を写真・イラストと共に執筆。横浜に開港舎を開き、かながわ健康財団『ヴィサン』、森林財団『森の友』など地域発信型の媒体を手掛ける。葉山町在住。著書に『ウォーキング神奈川』(河出書房新社)、『食彩 横浜中華街』(生活情報センター)、絵本『カムイの森』(十勝毎日新聞社)他、挿絵展も多数開催。2008年『にいがたのおかず』以後1年1県のペースで郷土の食材と料理の取材を続けている。*食改善=食生活改善推進団体スーパーマーケットは地域の台所であり茶の間第三者からのご意見■『おかずの本』とは地域で受け継がれてきた家庭料理のレシピや地元の食材といった食文化を都道府県単位で紹介しているのが「おかずの本」です。2006年に編集者でライターの服部一景氏(70)が地元・神奈川版から制作を始め、2019年4月に発刊された最新の高知版がシリーズ11冊目となります。CGCグループとしては2013年から制作に関わり、これまでに『ちばのおかず』(14年)、『いばらきのおかず』(14年)、『あいちのおかず』(17年)、『こうちのおかず』(19年)に協賛・協力しています。地元の自治体や学校へ献本したり、加盟店の店頭でも販売して地域の食文化の継承に努めています。51CGC GROUP CSR & CSV REPORT 2019

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る